目の前で人が転んだら、「大丈夫ですか」と声をかけるのではないでしょうか。
そうすれば転んだ人も「大丈夫です」と返しますね。
こんな当たり前の「大丈夫」の使い方がおかしいことになっているそうです。
おかしい「大丈夫」とはいったいどんな言い方なのか、正しい敬語の使い方や言い方を確認しましょう。
「大丈夫」の意味と語源
手元にある辞書を引いてみると、大丈夫は「あぶなげないこと。たしかなこと。しっかりしていること。」とあります。
この意味を理解した使い方の「大丈夫」であれば大丈夫です。
大丈夫の語源は中国にあり、「丈夫」は成人男性のことを表し、そこに立派であることを意味する「大」をつけて「大丈夫」という言葉になり、日本に伝わりました。
結果、日本での大丈夫は「立派な男性」という意味から始まり、これが転じて「とても強い」「しっかりしている」という意味になり、更にここから「間違いない」「確かである」という意味に派生しました。
おかしい「大丈夫」の使い方・言い方
冒頭で書いた転んだ人への「大丈夫ですか」は、言い換えれば転んだ人に危なげないかどうかを確認する、つまり「怪我はないですか」という意味になります。
大事な試合を控えたチームメイトに「お前なら大丈夫だ」と声をかけるのは、言い換えればチームメイトが立派であることを認め、実力を称える意味になります。
これらの「大丈夫」の使い方はおかしいとは言えません。
おかしい使い方の「大丈夫」とは、断りや伺いの場面での「大丈夫」です。
「大丈夫」で断る
コンビニでジュースを1本だけ買ったとき、店員さんから「袋にお入れしますか?」と言われたなんと返しますか。
「大丈夫です」と返していないでしょうか。
友人と食事に行ったとき、友人が食後のデザートを頼もうとしているときに「お前も頼む?」と言ってきたら、「私は大丈夫」と返していないでしょうか。
こうした「断りの大丈夫」はおかしい使い方として見られます。
「大丈夫」の一辺倒だと違和感が理解しづらいので、大丈夫と意味が似ている「問題ありません」に言い換えてみましょう。
コンビニの場合だと「袋にお入れしますか?」に対して「問題ありません」と返すことになるので、「袋に入れていいんだな」と解釈されるかもしれません。
デザートの件だと「お前も頼む?」に「私は問題ありません」と返すことになり、意図が伝わりにくいです。
しかし実際の「断りの大丈夫」ではこうした誤解は生まれず、断りの意思として相手に伝わります。
なぜなら袋に入れたり、デザートを注文するかの確認をする「そうしたお気遣いはしなくて問題ありません」という拒否の意味が暗に伝わっているからです。
とはいえ「大丈夫」の元々の意味からすればえらく遠回りした言い方ですが、こんな言い方をするのにも理由があります。
「『いりません』など断るときに明確な言い方をすると、きつい印象を与えてしまいそう」というのが「大丈夫」で断る理由だそうです。
おかしい「大丈夫」の使い方は相手への気遣いなのですが、それでしたら正しい敬語を使ってやんわり断ってみてはいかがでしょうか。
「結構です」は非常に万能かつ言いやすい敬語なのでおすすめです。
例に出したコンビニのジュースであれば「このままで結構です」と言えば大丈夫です。
是非「結構です」を決行してみてください。
敬語を使う必要がなければ、明確に「いらない」と断るべきですが、やはりきつい印象を与えてしまうかと不安であれば、理由を付け加えるとやわらかくなります。
例に出したデザートであれば「お腹いっぱいだからいらない」という言い方にするだけで印象が変わります。
伺いの「大丈夫ですか」
電話を掛けたとき「もしもし、今お電話大丈夫ですか」と言っていないでしょうか。
電話を掛けたということは相手の時間に割り込んだことになります。
会社であれば仕事中かもしれませんし、友人宅であってもテレビが一番おもしろいタイミングかもしれません。
相手が何かしてるときにいきなり割り込む電話は、相手にとっては大丈夫じゃないはずです。
もちろんこれは「私と電話をすることはあなたに問題ありませんか」といった意味ですが、やはり使い方としてはおかしいと言わざるを得ません。「うるせえなあ」と思っても、今回のテーマなので我慢してください。
この場合は「今お時間よろしいですか」に言い換え、相手が「大丈夫です」と答えるのが正しい大丈夫の使い方になります。
事前に「大丈夫」を確認する
電話の他にも急な訪問で「今、大丈夫ですか」と言う人もいます。
これも「大丈夫」は相手の台詞ですし、「駄目です」と言われたら元も子もありません。
電話や訪問をするタイミングが決まっているのであれば、事前にメールなどで相手に連絡しておきましょう。
「大丈夫」の正しい敬語
「大丈夫です」はビジネスの場で使っても問題視されませんが、元の意味で考えれば「評価」の意味合いがあるため、厳密に言うと目上の人に使うべきではありません。
メールで取引先に「その内容で大丈夫です」なんて送っていないでしょうか。
上司から「わかった?」と言われて「はい、大丈夫です」と答えていないでしょうか。
OKであれば
- 「承知しました」
- 「お願いいたします」
NOであれば
- 「結構です」
- 「遠慮します」
正しい敬語が使えると、周りからの評価も上がるかもしれません。気づいてもらえれば。
おかしい大丈夫が認められる?
ここまでおかしいと言ってきた大丈夫の使い方ですが、2010年発行の明鏡国語辞典の第二版では大丈夫の用法として以下の様に掲載されています。
例文:「お一ついかが?」「いえ、大丈夫です」
時間の経過とともに言葉は変化していくので、いずれはこの記事の方が「おかしい大丈夫」と銘打ったおかしい記事となるかもしれません。
おかしい大丈夫の使い方まとめ
おかしい大丈夫の使い方は言葉が乱れたと取るよりは、相手への気遣いの模索のようです。
非常に大切な気持ちではありますが、明確な意思を示す言い方は必要になりますし、もしそれできつい印象を与えてしまうかもと不安になったら、状況に見合った正しい敬語を探すことをおすすめします。
特にメールなどビジネスの場では言葉使いを気にする人も多いですから、いつも使っている大丈夫で大丈夫か、もう一度使い方や言い方を確認してはいかがでしょうか。
二人で食事に行きサラダを頼んだ。少しして、年齢24、5歳くらいの店員さんがサラダと二枚の取り皿を持ってきてくれた時に、「取り皿は大丈夫ですか?」と聞いてきた。 私は必要なので「はい」と答えたら、取り皿を置かずに持って帰ろうとした。案内された席が狭いテーブルだったから、「狭くなるけど取り皿が必要か?」という意味で大丈夫かと聞かれたと思ったが、店員さんは「必要無い」と捉えたようだ。そのあとすぐに持ち帰ろうとした取り皿を置いていってと頼んだが、店員さんは少し怪訝そうな顔でその取り皿をテーブルに置いて行った。なんだかモヤモヤした気分になって検索したらここに辿り着いた。文中にもあったが、時代とともに言葉の意味が変化していく事があると思うが、本来の意味として正しく使い続けるべきか、時代や世間の流れに乗って変化を受け入れるべきか…悩む所だ。